西澤保彦
幻冬舎文庫
伝統的な本格ミステリ。序盤は、クローズド・サークル。台風の影響で隣町から隔離された首尾木村での大量殺人事件が描かれる。その数年後、生き残った主人公たちが事件の真相へと近づくという物語。
物語の発端となる首尾木村での大量殺人。事件は次々とおき、流されるままに読み続けてしまう.途中、伏線となる部分が何カ所もあるが、検証せずに読み進めてしまう。スピーディで事件の一応の解決まであっという間。
事件は一応の解決されるが、主人公の体験とは大きく異なる部分も多々ある。その疑問点に答えるべく、成長した主人公たちが事件の真相へ再び近づいていく。
上巻では、部分的に事件の真相が描かれるが、多くの謎が残った状態で終わる。下巻でその謎が解決されるだろう。論理の組み立ては、さすが西澤保彦という感じだが、物語自体は少しご都合主義と言わざる終えない部分もある。加えて、世界観が大きく飛躍する部分もある(上巻の最後の方などは、少々やりすぎな印象)。クロ自身は気にならないレベルだったが、本格推理好きには気に障る部分かもしれない。
残された謎が下巻でどう解決されるか、非常に気になる。おどろどろしい殺人の描写や性描写はともかくとして、物語よりも謎解きをメインに読んだ方が楽しめる本です。